図書館

 昨年末からうちの近所に区の中央図書館がある事を思い出してしばしば足を運ぶようになった。というか、雑誌を買わなくなった代わりに購入する書籍の数と金額が倍増して、経済的な逼迫と(自室の)空間的な逼迫にさらされ必要に駆られて始まった図書館通いだったのだけど、一度登録に足を運べばあとは自宅からインターネット*1で蔵書検索→予約ができ、用意できましたー、というメールを受けたらカウンターに行けば揃ってる。という非常に便利なことになっていて、気がついたら貸し出し限度10冊予約限度20册が満杯という状況が二ヶ月程続いていた。結局購入冊数はそれ程に変化が無かったのだけれど、とにかく返却期限があるから積ん読にならない利点もあってしばらくは読書マシーンと化していた(というか今までいかに読んでいなかったのかというだけだが)。
 しかし一通り、検索&予約でぱっと読みたかったものが落ち着いて、徐々に「おや、なんでこれがない?」というタイトルが目につくようになった。具体的には河本英夫氏の本がなんと渋谷区の図書館の中に一冊も無い(訳本一冊除く)のに驚いて、返却ついでに全著作リクエストを出してみたりした(これはオンラインでできない)。ついでに他にも幾つか無かった知人の新刊とかも。で、一週間程してリクエストが揃ったというので借りてみたところ、新規購入は新刊のもの以外なくあとは他の区の図書館からの特別貸し出しということだった。ちなみに、それらは時間外返却ができない(ポストに返されて痛むと困るというもの。自分のところのはいいのだろうか)、貸し出し延長ができないなど制約が多くそれも困ったのだけれど、今日聞いたところだとこの事態の理由は石原都知事が「図書館の本は都内に一冊ずつあればいい」とかのたまったためだということで! ちなみに保存書庫の大幅廃棄も行なったそうですが、おかげで絶版本がほとんど見つからないのか、など思い当たるに連れ一応元作家だったはずのこのジジイが都庁29階からジャンプ! とかしないかなー、なんて黒い妄想を感じたりします。
 さておきそんな制約の中、太田区立図書館からやってきた河本&花村の『精神医学』は、インタビュー、対談形式のためずいぶん前から『メタモルフォーゼ』(河本)を読み途中にしている私にも読みやすくシステム論の入門的に役立ちました。花村さんは分裂病方面の著書があるお医者さんなのでこの本はアプローチが分裂的体験としての心的システムのメタモルフォーゼとかそういう感じですが、個人的には昨年末にでた十川さんの『精神分析』で散々援用されていた構造的カップリングとかのタームがやっとしっくりきたのが収穫。(臨床の)分析においての転移空間は確かにひとつのオートポイエーシス的なシステムを形成する。そのイメージがくっきりしたというか。