droog shop

pesce2004-04-15

 日本でも人気の高いオランダのデザインレーベル、ドローグデザインは今年は"Go Slowly"ということで、作品の発表以外に関連するインスタレーションのカフェを併設していた。シンプル、発見(驚き)、ユーモア、を感じさせるプロダクツの印象が強い(正直なところ昨年以来入ってきている限りの情報では彼らは純粋なそれからは離れつつあるが)彼らの今年のインスタレーションはそのキャッチの体験であり、実際にプロダクツを使用して"Slow"を知ることだった。記述するなら、それはオランダから連れてきた老人らがギャルソンを勤めるデザインカフェでありちょっとした発見に満ちたカトラリーや食材からなるテーブルを構成するコンセプトとしてのスロー、美徳としてのスローへの快感を思い出させるような作りであった。笑顔に満ちた少々耳の遠いおじいさんの、おせっかいなくらいに丁寧なもてなし。塩でできたテーブルに埋め込む茶碗、素材のままの軽食(Taste slowly...ゆっくりと味が出る根菜が中心)、ちょっとした手間で生まれるプロダクツへの愛情。キャッチコピーだけではなく「体験させる」。特に私達取材陣のような手早く合理的に最も効果的なシーンのみをキャプチャすること、といった姿勢はまっ先に膝を抜かれる(フォトグラファーは「もう、バカすぎてぶち切れそうだった! 作品買っちゃったけど」とのこと)。いや確かに実体験のレベルでの(象徴にはありふれた)「スローライフ」提唱はドローグほどの知名度とキャッチーさをもってしか共存させることはできない。そしてもちろんそれは私達媒体関係者には行使できない手段の「経験の提供」、彼らの肌に触れることが可能であることで私達の羨望を買うわけで。
 冴えはないのかもしれない、もうすでに彼らの発表から既視感は拭えない。しかし意識的に表現された「キャッチ」と「体験」の"ずれ"は存在する。その一点に賭けるなら彼らは生き延びる。どこまでその"ずれ"などという遊技の危うさに身をゆだね続けるかということではあるのだけれど、現時点でドローグはスローでありつつスリリングなエキシビジョンを成立させていたように思う。次の行き先を観たいと思わせるに足るだけの。
 船頭であるところのハイスに会えなかったことだけが残念。デンマーク行きの際にオランダまで行けると良いのだけれど。