『誰も知らない』(続き)

pesce2004-11-22

 フランスでは先々週公開だったと言うことで、今さら向こうで観てきました是枝さん作品の感想part2。(part1は先週)
 ネットで見た幾つかの感想では「YOUが嫌いになった」とかあったけど(笑)あの母親役に関してはしかし、YOUの好演で基本的には、あまりに浅はかで許されないことをしてしまうにも関わらず、憎めない一人の女性、が上手に描けている。そして困窮してもなかなか母親に連絡を取れないアキラくんの行動、そして「お母さんが幸せになっちゃ、ダメっていうの?」と言われた時のうつむき。母親の「母じゃない顔」を見てしまうことへの予感と恐れ、は、状況や程度はそれぞれ違えどかなりの観客が記憶の破片をちくりと踏んだのではないだろうか。
 あと、またこれも話題で見かけたラスト前のシーンでかかる歌なのだけど、私は見た状況が状況だったのであまり何語の歌詞が乗っても気にならなかったけれど(ちゃんと字幕はでていた)、連れが言うには「予告編で何度も何度も、あの音楽を聴いていて僕は歌詞はわからないけれど嫌だった。だけど、こっちの映画評で幾つも”あの曲は難なんだが、しかし映画はよい”と書かれていたので、観てもいいかと思ったんだ」と、いうことで歌詞が日本語じゃなくてもtoo muchだったようです隊長!*1 でもあまり歌詞や映画そのものに物語やコンテクスト付けをついついしすぎずに、そのへんは脳内ノイズキャンセラでこうね、映像とあまり結び付け過ぎずにやりすごすのも楽しく映画を見るコツかも知れません。私はかのシーンは『チワワちゃん』と『リバーズエッジ』のラストシーンに思いを馳せつつフランス語字幕と日本語歌詞とメロディをそれぞれ解離させて「美しいなぁ」と弛緩し切っていました。あのシーンがあったから、その後もう一度淡々と続く日常に、子供達らしい軽やかさで還っていく姿もラストシーンらしい色味を帯びるのではないかと。
 とりあえずアキラ君が大人の顔になっていくあたりで「(『ボクタマ=僕の地球を守って』の)シオンくん?!」などと思ってしまって、京子ちゃんがアリスに見えたりしたってのは、フランス人には説明しないでおいた。

*1:でもやっぱりあのコンビニ店員役の人が歌ってると聞くとちょっと仰け反る。