Noel

pesce2004-12-26

 ハッピーホリディズ、皆様。
 さて、例年のとおり祖母宅でのクリスマス食事会を済ませあとは仕事という風情の無い12/24-5を過ごしました。これであとは年末&新年モードになるんですね、世界は。私はここ五年ほど年賀状すら書かないので、年末にパードン邸で手打ち蕎麦をいただいて紅白をラジオで聞く、という行動で一気に「あ、年末だ」と思わされるのと、とりあえず豊川稲荷にいってとらやでお薄茶と新年のお菓子をいただいて夜明け前に帰るという事をいいかげん三年続けていますが、それすらひとときの夢のようなもので、テレビは見ないし街にも出ないので、やはり年が変わった実感をうまく持てない。それもあって今年はつい先日も「今年って、平成何年だったっけ」と、16年ももう末なのに聞いてしまったり。12年くらいから止まってるんです。しかも今年は1/5〆切りの原稿をどうも一章分抱えてしまいそうな気配なので、やるなら正月三が日が缶詰めです。うち明治神宮が近いので危険かもしれませんが(花火と初詣客はけっこううちの前を通る)。
 さて、そんな悲しい話はもう忘れなよ、と自分にギターをつま弾きながら、直島ベネッセアートサイト話。
 ベネッセハウスステイ、というかギャラリーのホテルはやはりよかった。悔しいほどよかった。部屋から海絶景、誰もいないような静けさと静止した建築内部、気の配りかたが尋常じゃない従業員、設備の過不足の無さ(ベッドやバスローブの質のよさ、部屋にテレビが無い事、水まわりの使い勝手など)、と、個人的にはボンのヒルトンに並ぶ心地よさでした。なんていうか、いわゆるラグジュアリーホテルでは無く、贅沢なポイントと質素にするポイントのバランスが自分好みなんだと思う。夜になって、宿泊者だけになってからのギャラリー巡回もまたよい。ひとりで、特にアート鑑賞という気持ちでも無く館内を散歩して、気になった作品の前で好きなだけ立ち止まったり座り込んでいられる。宿泊者同士、たまに出会う時に言葉を交わさずとも親密感がある。カフェ脇のテラスにちょっと出て、そこにある大竹のモニュメントを覗きにいった時、ちょうど月が真上に出ていた。視点を落とすと、先ほど通過した天井が透過となっている作品のコーナーからオレンジ色の光が空へ伸びている。それがなんだったか、思い出すためにしばらく考え、安田侃の『天秘』と思い出したので最後にもう一度月に目をあげると、オレンジ色の天井の残像が反転して、緑色の四角の柵を作り出し空の月を捕まえた。偶然の作品があらわれやすいのも自然の中の美術館の特権か。
 まあ、初日の夕方すぎまで部屋に張り付いて原稿書いていたわけですけどね。しかも、無茶いってベネッセ職員に詰め寄ってファイルを送らせていただいたりして、ようやく晴れて夕食、ギャラリー鑑賞と翌日の地中美術館、とあいなったわけですけど。前日の高松は、栗林公園には行きましたが、戻って夜は原稿、朝は五時に起きて別の部屋で連れを起こさぬよう気遣いつつ朝食ギリギリまで原稿、直島行きのフェリー一本遅らせてレイトチェックアウトにして昼まで決死の文字調整、とさんざんでしたが夕食の寿司やさんは美味しかったです。ガイドにも載っている「やまと」という店。何でも美味しいし、多分宿泊先のホテルが偉そうなところじゃ無ければ値段も加減してくれる(笑)。「全日空ですか?」というので「東急インです(パックで)」と答えたら、なにやら視線を遠くにやってから微笑んで、会計を書いていた。ちなみに値段は店内に書いていない。