庭園美術館

pesce2008-01-27

晴れた日曜の午後に唐突に昨日スタートの『建築の記憶―写真と建築の近代史ー』を思い出し、日差しの具合的にいま出れば間に合うなと全ての作業を投げ打ち白金へ。多分、お仕事でやり取りする機会はここ数年もあったけれど足を運んだのは五年ぶりくらいで、まだ向かいにある自然食品専門スーパーの本社に足を運んでいた時期の方が近いほどだと思う*1。最後に行った頃が丁度、建築雑誌に関わっていた時期でもあり、「建築写真」なるものがあり、それはあるルールに則って撮られる専門的なものですらあるという事を知ったばかりでもあった。で、そういうものではなく写真として建築物を撮り雑誌としてそれを編集しデザインする異端に在籍していることに気付かされて驚いたりしていた。で、この展覧会で、なんだありだったんじゃないかやっぱり。などと畏れ多くも思ってみたりもする。
さすがに日本で最初に撮られた建築の写真、なる島津斉彬らによる薩摩城あたりは博物館にいる気分であったり、ワタリウムでの展覧会に行けなかった伊東忠太の写真やらスケッチ、ノートはしっかり資料と付き合わせて見たいから次回だなーとか思うわけなのですが渡辺義雄や村井修にくると建築に対する編集的な写真術が高度成長期前半にもうあったんだなと、いう感慨とともに写真として観ることができる。石元泰博とか、ベッヒャーかと。
回廊を昇って最後、日が陰り始めたウィンタールーム、こと四階の温室に辿り着く前にスタッフのおばさまに「つい先ほど、日が当たっている時でしたら暖かかったんですけれど」往時はほら浅香邸でご一家が冬の日のためにお過ごしになる、ですから翻って北の間は夏に、風通しがよく云々、と余計日が陰り行く長めの説明をうけ、一緒に捕まった見知らぬ少年を残し途中であがると、窓ガラスが薄く曇り、暮れがかった飴色の光は外に留まり、確かに冬の部屋と言った面持ちとなったその真ん中に氷の固まりのようなアクリル製の青森県立美術館模型が置かれていた。その瞬間に多数のカラスが上空に飛来し回りながら鳴き合うなか、連れ去られるようなゾクリとする感覚に包まれ改めて自分がいまいる建築物へと意識を戻す。旅のような、良い展示。
帰りにご一緒した土木建築家? 渡辺竜一くんと茶沙kanetanakaカフェへ。お濃茶をエスプレッソに見立てて、リキュールを入れるシリーズを見つけ最後に頼んでみた。濃茶+ドランブイ。小さめのカフェオレボウルのようなお茶碗に、江戸切り子の猪口にお酒が添えられ……えーと、せっかくの良いお茶がもったいないのであれはやめるか、量を考えて添えるべきかと。冷酒檸檬や食事は良かっただけに残念だ。*2

*1:なんとこの時期はある雑誌の創刊編集長に任命されていたのだから何がどうなるかわからぬもんで

*2:あと大きな世話だけど都の持ち物(美術館)と私企業の店という分け方はいつもながらに非常にもったいないな。昨年ティファニー展では例外的にオープニングレセプションをここでやったと聞いたけど、単に「近い店でやりました」の位置づけなんだろうし。それでもいいから、境界を曖昧にさりげないコラボを組めるスタッフはお互いにいないものかとよく思うんですが。まあ、建前がある以上媒体で紹介が出来ないんですけどね、多分。