新聞

pesce2008-04-09

Rosasの新作のタイトル"Zeitung"直訳です。新聞、って。
とりあえずこの運河の街、個人的には『オランダの光』や『レンブラントの夜警』といった映画でしか知らなかった街で、想像していたとおりの水の煌めき、反射と光を孕む雲などの輝きの中、かなりリラックスした気持ちで開演を待つ。市のほぼ中心部であり、道と運河が交互にあるような地域に宿も会場もあったので水のある土地が好きと公言している自分としてはもちろんそれだけでも十分な条件なのだ。花が咲き零れ、運河にはゆっくりと観光以外の船たちも行きかう。その速度が歩く人々のリズムも作る。
公演は、ほんの数日前にローマで別公演も観たところだったけれど
あの時感じたように、この作品もまた「音」だった。
ステージには一台のグランドピアノだけ。
装飾も何もない舞台でダンサーたちが両サイドに集まり始めるとピアニストは座り、Die Kunst der Fugeから始まる。
第一のフーガが終わり次の曲とともにダンサーたちが一人、二人と舞台へ流れ出てくる。
和音のように、ユニゾンするいくつかの音のように、跳躍し駆け抜ける音楽として、そして残響のように影を残し。
鍵盤のそれぞれの音の特徴のように、大柄な手足の長い男性や、美しい少年のような男性、
またローマにもいたと思う白い肌に軽いブロンドの小さな女性、そして黒髪と赤いハイヒールで走るFumikoさん、
インプロのようでいて、しかし完全に設計され狂うことのない楽譜の上の実体と、
一体化したり離れたりを繰り返すピアノ音を受け入れながら時間が過ぎる。
いや時間が音の流れに沿うような。一時間と少しの間の公演が終わり外に出ると日は暮れていた。
しかし3ユーロだったので買ったけれどブックレットがオランダ語で全く読めません。
写真と2色使いのデザインがかっこいいので、まあいいんですけど。
さて出てみて、何か食べようかな寒いから近くがいいな、と斜向かいのバーに入るがサンドウィッチしかない。
出ようとするとオペラ歌手とその付き人と言うおじいさんと若者に捕獲され
なかなか出れないうちに隣のメキシカンが閉まる。と言うことを知らず、
店の人が「隣はメキシカンでまだやってるわよ」といってたのを信じ外に出ると若者がついてき一緒に店に入ってきた。
けど、なんかが違う。入り口に駅の改札簡易版みたいなグルグルがあってバーカウンターが良く見えない。
戸惑っているとついてきた若者が、「好みは? あと飲み物は?」と言うのだけど
少し飲んできたので一瞬忘れていたよここアムスだった!
あー、それはそのつもりないなー、橋の向こうのコーヒーハウスエリアとか近づかないようにと思ってたんだが。
と、紅茶を頼みあとは若者に任せて席に座って「何か食べ物は?」と聞くと
「チョコレートバーね。あ、普通のカカオの」って、女将さん! それどっちも、いまはいいや。。。
結局若者が何か塊りを持ってやってきてニコニコ煙草に混ぜ始めているんだが、
紅茶を飲みつつ、あーこれ匂いがつくなぁ。成田で犬が横に座ったらどうするねん。
そんなことを思いつつ少しだけいただいて深夜前には帰る。お店自体は健全と言うか23時閉店、という。
若者もオペラ歌手が隣のバーにいるとかで、宿まで送ってくれたけど
「部屋でもう一杯だけ飲まない? まだ残ってるし」というのを「ご遠慮! おじいさんところに戻ってあげて」というとあっさり引き返す。
ホテルのバーでシュナップスを一瓶買い、部屋に戻る。

常夜灯に揺らめく運河の暗い水面を眺め薄めたビールを飲んで就寝。

客層は結構カジュアル、老若男女、居心地がいい。

あの、見たことないメニューしかない(涙)