スワロカー

pesce2008-05-07

スカフレイムスの大川さんから電話が来た。ひさしぶりやなぁ、DBRいけへんくてごめんね、などと話していると、唐突に「俺、車作ったの」。いや、車? 作った? スカフレイムスは日本最古のスカバンドで結成23年とかそういうところで大川さんはそこのバンマスです。混乱します。また、なんで? 「いや、スワロフスキーでワークショップとかやるからいういろいろ話があって、それで俺がこんなんどう? みたいなことでな。車。」いやわからない、想像がつかない、それって見れますのん? 「近所やし、とりあえず持ってくわぁ」
ということで全く「?」のまま、実車到着を待ってみる。晴れた五月の午前、到着したのは軽ワゴン
表面が光を受けてキラキラ嫌味ない光を放つ、シンプルな外見。で、後部ドアを開けると。
photo by Yoshimitsu Umekawa
なんとごついことに。
真っ白な、有機的なフォルムの壁面、椅子、テーブルにライト。
外からは想像がつかない拡張された世界が広がる。
壁面と天井、テーブル天板には無数のクリスタルが埋め込まれ、
片面の壁にはアクリルの中を飛ぶ色鮮やかな小鳥たちが煌きながら埋まっている。
私が見たのは昼だったが、夜に観ると小鳥たちや天井にはLEDが備えられより幻想的な空間になる。
小鳥たちは剥製用の本物。それがただ美しいだけじゃない強い存在感を後押しする。


ここは創造の部屋だからということへの大川さんの答えがこれなんだろう。
ケータイや衣服や小物、たまに爪や睫毛などに貼られるスワロフスキーの、素材としての一面。
誰にでも参加できる「創造」を一段高める、創造のための部屋。
茶室のような小さく無限に広がる空間、というものを連想する。
部屋の奥にはクリスタルとLEDの入ったガラス管の壁がふわり輝く。
作り出す行為にデザイナーだとかの肩書きは必要ない、
「創る」行為は行動にうつせばジャンルの壁を易く乗り越える……という、
当たり前だけれど実践されにくいことを、大川さんは常に精力的に証明し続けている。
仲間内から始まったDBRを2000人規模のイベントに育て上げ「この契約書ってどうなってんのん?」と
質問しながらひとつずつ自分たちの手でレーベル、バンド、シーンを育てて、
更にちょっと見てないうちにこんなものまでひょいと作る。
凭れかからず、自身で引く線の上に自身で杭を打ち柱を渡し、利用せず利用されずに
誠実にものを作る強さと繊細さにいつ会っても(電話一本でも)姿勢を正す。男前です、大川毅。
車は週末のホビーショウ出展後(引渡しまでスワロ側には実物見せないと言ってた……)は、
手を離れてしまうと言うのだけれど、春先に吉岡さんが作ったスワロ銀座店のような
ハイカルチャーで少しお高いデザインだけではなく(それはそれで素晴らしい出来だと思いますが。)、
購買より創造へ思いを馳せる仕組みも生き延びる世界であって欲しい。

そしてこれが自然光が当たるとすごいことになるらしい。

エントリー表題と個人的に一番身近なスワロフスキークリスタルグラスは、
部屋の窓辺に晴れた朝に回るレインボウメーカーにぶらさがっている粒。
南米や南仏の友人宅によくあったけれど、アメリカ製だと知った。
日本ではたまにプレゼントすると珍しがられるけれどメジャーではないのかな。
降り注ぐ陽射しの、ただその虹が回る部屋を誰かと眺める朝というのを、
ひとつの幸福の形として大切にしている。
自宅窓辺にて。