refract!

pesce2008-05-16

西麻布のCalm&Punk Galleryで東恩納裕一さんの展覧会があったので足を運ぶ。このギャラリーはGas asがやってると聞いていて、毎回リリースをもらっていたのにタイミングが悪くてずっと足を運べないでいた。ようやく、で伺えることになり、そういえば建築家の飯田都之麿さんがあの辺りに事務所を移転したと言う話を聞いていたなぁ、と何気なく電話をしてみたらなんと同じビル。というか、ギャラリーのフロアとくっついているような作りの二階だった。3月末のスープ会以来で、ご挨拶と事務所訪問が同時にできた。以前の事務所には取材で2002年の頭に伺ったけれど、その当時のままのものもあり、もちろん新しい作品のモックなどもあふれており活気がある
入り口看板を見て驚く
倉俣史朗さんのアクリルワークをやった職人さんの手によるものだそう。
東恩納さん自身にお会いするのは初めてだったけれども、
時代の体温展から始まり、昨年の六本木クロッシングや今年のミラノサローネ(!)*1で、
作品にはよくお目にかかっていた。けれど、もっと若いひょろっとした人だろうかとぼんやり思っていたので、
『フクヘン。』鈴木さんからご本人を紹介いただいて、その町田町蔵ばりのメヂカラと雰囲気に少し驚く。
ご本人はいたって物腰柔らかく、お話も丁寧に色々とアイデアに絡んでくるものを聞かせてもらうと、
また機会を持ってゆっくり話したい人だと思った。
蛍光灯シャンデリア。眩しくてオートマカメラでは沈む。。。
飯田事務所の窓から。つまりギャラリーの天井高は二階ぶん。
この日は、限定で作品集を販売していて、これは東恩納さん曰く「かなりわがまま言わせてもらいました」とのことで、
本人による作品紹介や、そこに至る思考など文章も多く載っている。
現金を持ち合わせていなかったので後日と言うことにして立ち読みをパラパラ失礼させていただくと、
キーワードとしてウンハイムリッヒとある。いわゆるフロイトの提唱した概念『不気味なもの』
(過去からの風のような)なのだけれども、確かに作品世界に一貫しているのは身近なもの、
ファンシーなチープなもの、かわいい(はず)のもの、そういったモチーフのお化けのような、
異形の美だったりする。日常にあふれる見慣れた蛍光灯やファンシーな手鏡やテーブルクロス、
それが違う顔を見せるときに何か無意識に排除してしまいたいような「不気味さ」がつきまとってくる。
だから既製品からのリプロダクトと言う手法をとっているのか、と思う。
(といってもパラっとみてその前後の文章が読めていないのでもっと色々あると思うのですが)
展覧会タイトルのrefractは、反射だけれど、屈折させる、refractorで屈折望遠鏡、とか
光や視点を反射し迂回させ新しい効果を生むような、そういう意味もあると思う。
モニターに映し出したりすることで、透過光と反射光が反転する*2ような、リフレクトの構造と、
それをすり抜けてくる『不気味なもの』への怖々とした振り向きを促す。
アートの役割は「癒し」なんかにはない、と思う。
左)全てのグラスにシャンデリアリフレクト/限定作品集右)
左)シャンデリアonモニター/右)ステンシルで描かれるレース編み

飯田事務所の受付嬢(笑)モック

*1:道中記には書くスペースがなかったけれど、まさかボンベイサファイヤの恒例のプライズでこういうのがでてくるとおもわなかったので驚いた。

*2:個人的に透過光、と反射光、の人間に対する認識の違いはとても大きいと思う。ステンドグラスのように、テレビのように、透過してくる降り注ぎ浴びせられる光と、物理的にそこにあるものからの反射である光の違いはメディアとしても意味作用は変わるし。