最後のボレロ

pesce2008-07-02

2005年に封印されたはずのSylvie Guillemのボレロ、ですが4月のシャンゼリゼ劇場で"en Exclusive!"とかいうチラシが配られていて、そこに確かにあったのですよ。
"Bolero"という文字が。帰宅してよく見ると"hommage a maurice bejart"で、1 et 2 Juillet ということだった。そのときは正直迷ったまま帰ったけれど思い直してチケゲット。そして迎えたau Chateau de Versailles というわけでした。RERもB線以外は初めて(その空港線も数年使ってないけど)、でたどり着いた先。市外の微妙な寂れ方がいい。もう夕方になってからついたので食事だけして、21時開演に駆け込む形で。

春の祭典(東京バレエ)
ルナ(ギエム)
舞楽(東京バレエ)
ボレロ (ギエム)

という演目で、みなそれぞれに素晴らしく……いえ、一緒に行ったフランス人女子
(普段、ダンス関係は興味なし)に説明するのは辛かった、何がって、舞楽
モーリス! 生きていたら聞きたかったよ、あのアメフトコスのダンサーたちは何なんだって。
ベジャールのアジア」というシリーズだとは知っていても、
アメフト四天王(四隅に立つ)の間を列になったり輪になって動く巫女の群舞と、
カンフー? みたいな赤いパンタロンのソロダンサー。
まだ、カブキとかなら……。友人には聞かれる前に「わからん」と答えておきました。


庭園の池の上に四角く何もないステージ、春の祭典は女性パートが特に美しかった。
ルナはギエムの跳躍が手の振りが実際以上に大きく感じる、存在感。舞楽、は……、さておく。
そして陽が落ちきるころ、見覚えのある赤い円形のステージが水上舞台に設置される。
あの音楽が始まり、「リズム」と「メロディ」が動き始める。
高い高い跳躍はまるで宙に留まるように。いつも思うけれどギエムは音そのものになる。
もういないベジャール、深い青い瞳。連れが途中
「彼をローザンヌで時々見かけた。怖い犬みたいな顔だけど、とてもきれいな瞳をしていた」
と話し出す。バレエに興味ないくせに、と言ってみるけどさすがにかの地では有名人で、
短期間住んでいた彼女は名前と数回のすれ違いだけはあったらしい。
有名人好きの彼女にしては珍しく話しかけられなかったそう。
ベジャール本人は自身の死後に作品の上演を禁じるといっていたそうなのだけれど、
この一連のツアーはどうなのだろう。まあなくなった直後に新作の上演もあったし、
本当に一度限りのということか。
どうなるのかと思っていたけれど、2009年2月に日本公演も決定し先行販売もされている。
ただしセット券ですが。これが、本当に「最後のボレロ」になるのだろうか。
ギエムに限らず、全ての?


屋外ステージは何とか天気も持ちこたえて、水面の煌きを自然光からステージライトに変え、
何の飾りもないダンサーたちの肉体だけが映し出される最高のスペクタクルとなった。
友人を駅まで送り、そのままばったり就寝。

ただあれだ、上演中、時折あちらこちらからフラッシュ光が飛ぶ。
んー、注意でフラッシュ撮影や携帯電話の音や会話は禁止と、英語とフランス語では言ってたが、いるのね。
と思うと斜め後ろから光。振り向くと三列後ろに日本人のおばちゃん二人。
うわー! と、一瞬注意するべきかと思ったけれど、微妙な距離感と
言っても無駄そうな空気感に阻まれ、振り向かぬことにする。
終了後ちょうどしばらく後ろを歩いていた二人は合流した同行のおじじとともに
「とてもステキでしたわねぇ」
「やっぱりモーリスベジャールだからねぇ」
「そうねとても現代的ですねぇ」
「モーリスベジャールですものねぇ」
とどこへも行かない会話をしていた。
振り返ったら負けな気がしてずかずか歩いて外へ。
おかげでパンフレットを買いそびれる。

指を突き出すと寄ってくるのは世界猫共通