タイポです。

IDEA no.333 特集・エミール・ルーダー発売記念トーク@ABCに行ってきた。
というか今頃なぜこれを書いてるかというと、目やら喉やら痛めたり異動したり
その上、正直エミール・ルーダーってスイスのタイポグラファ、バーゼル派って
いうかまあ、アートっぽいというか教育やらなんやら影響強いカリスマさん。
以上。という知識だったのでせめて特集を読み終わってから書こうと思ってたが
結局、図版は全て目を通したけれどテキストは半分くらい、と
いったところでいい加減、一ヶ月。もうすぐ春なので書き始めてみた。
それほど新たに情報を取り込まなくても、気にかけて日々すごしていると
そこら辺に落ちてるものやら過去にちょっと関わったものとか醸成されて
いつの間にかある程度、意見がまとまってきたりするものだったりする。
まあ書き始めなければ大体蒸発していってしまうので、書き留めることが大事。
てわけで

No.333_アイデア Ruder typography Ruder philosophy
すみません、地が白いから輪郭わからないけれど真っ白な彫刻のような美しい造本です

この日のトークはルーダーにバーゼル造形学校(Schule fur Gestaltung Base)にて
薫陶を受けたヘルムート・シュミット氏を中心にアイデア誌編集長・室賀清徳くん、
山本太郎氏で今回の「これが日本から出るって事でなんじゃそりゃって思われますよ」
という一冊丸ごとエミール・ルーダー特集号のことと誌面にも登場する図版や記録写真の
解説やらツッコミをしていくというような感じでした。(すみません遅刻しました)
会場大盛況すぎ。タイポな人ってこんなにいたんですか(失礼)と思った!
さてタイポグラフィ。出版に関わって多少はデザインが重要視される雑誌の
経験も数誌はある自分はもう少し知っておかないとと思いつつも、いつも
ADやデザイナーさんに「80'sっぽいの」「あ、これボールドだと変ですかね」
程度で済ませていて、これがあれでという意識は雑誌が変わるときに基本書体を
一応チェックしているくらいしか、ない。*1

トーク途中。スクリーンには組版中の手元、左からシュミット氏、山本氏、室賀君。
んが、昨年からヘルベチカだのなんだのちょっと関わりがあることもあり
ああ、ねー。そうか、空白は「無い」でなく「有る」だからー
とかグリッドってやつに縛られるのかグリッドを作り出すのかだよねー、などと
わかったような法螺を吹いているうちに昨年ちょっと仕事で読んだ鈴木一誌さんの
重力とフォント、みたいな当時は「イッテるねー」と思ったあたりも、参照点に
していけるなぁ、と思い直すに至る。ジョンケージ・フォントだってあるしね。
音楽のように、リズムと間とメロディに開かれたタイポグラフィ
特集冒頭に、室賀君が添えた”ヴァーチュオーゾ”との呼称が、主に音楽の
匠の奏者にささげられる呼び名であること(シュミット氏も指摘していた)が
今回特集に於いて開示されたルーダーの仕事を言い表しているだろう。
チューリッヒ派やバーゼル派というスイスタイポグラフィの中でも
影響力の強いそれぞれ、グリッドをどのレベルで捉えるか、図版や言葉、
色、メッセージ。全てからゆるゆる伸びる線の絡まりから自分のメロディ、
タイポグラフィを紡ぎだすこと。その点で五線譜の上の音符はとても
示唆にあふれる。ルーダーの軽やかなグルーヴは時に良質なクールジャズを思わせ、
また東洋の伝統的な音楽を連想させるデザインとも相性がよい。
タイポグラフィとしてはは、ルーダーがラテン文字系各種の併記デザインもやってましたが
さらに日本では漢字ひらがなに西欧文字、お隣韓国ではハングルと様々な可能性をもち
そのあたりは杉浦康平氏などが、色々と書いていたのも興味深く。
ハングルは組み合わせでどんな音も作れるという、音とタイポとデザインと。
デザインよりアートに相性がいいのかもしれないが文字の構築とデザインの要素を
ヴィジュアルから指摘できる可能性が高いと思う。
追記:IDEA特集内でもでてくるけれど、ロンシャンのこの写真集欲しい。

robert th. stoll: ein tag mit ronchamp
johannes-verlag, einsiedeln, 1958

詳細はwiedler.ch-Felix-Book storyにて。

*1:スイス派って何という人は「サンセリフ体」とかのwiki項目を読むとわかりやすくなると思います。ルーダーの前に、ヘルベチカとかチューリッヒ派とかも読むといいです、多分。あ、ヘルムート・シュミット氏も。