Janet Cardiff & George Bures Miller @MAISON HERMES

オープニング向かうため会社を出て、晴海通りをばたばた渡る。
作品は『The Forty-Part Motet 40声のモテット』と
『ナイト・カヌーイング(ビデオインスタレーション)』の二点。

レンツォ・ピアノ様の美しい建築のためなど撮影制限で、会場写真は無いですが、
基本的にこれは音像のインスタレーションがメインなので、まあいいというか。
でも40本のスピーカースタンドがぐるり囲んだ、その中をさまざまに人々が歩き
立ち止まるさまはそれなりに、画としても良いのだけれど。
タリスの『40声のモテット』"Spem in alium" は、もともと5声のコーラスを8群、
で40人の声でのモテットを構成するもので、エリザベス一世40歳の誕生日を
祝ってと言うというものでもあり、全編英語詞である。
それはさておき、今回のインスタレーションではそれを解体するというか
完全に40個別々のスピーカーから放たれる別個の声でのポリフォニー
再構築なんで、聞き方というか聴衆としてはまたまったく別の態度を
要求される、と言うよりも選択できるようになる。
一本(一人)のスピーカーの前に立ちその息遣いを聞いたり
塊となって押し寄せる編成に振り返ったり。
とはいえ後半のバス声部の反復を牽引力として一挙に宗教的恍惚*1とでも
言うような強烈なポリフォニック音塊に取り込まれる様な瞬間も。
ただ先に言ったように、そこは宗教的な素材から部分要素を
取り出したインスタレーションであり、その体験のあとには無機質な
スピーカーが数分間の沈黙を持ってただ自分を囲んでいる状況に
取り残されてふと苦笑いも出来る。
というのも、そのスピーカーの「声」は、沈黙の合間や他の声が
歌っている間にも呼吸し、息をつき、時には他の「声」と囁きあっている。
天上の音から解放された声たちが黒いスピーカーに潜んでいる。
『ナイト・カヌーイング』は真っ暗な小箱の中で数名でじっと
息を潜める雰囲気で観る、カヌーから電燈ひとつで照らされた
カヌーからの景色を追い続けるビデオ。
オープニング時は人も多いし、顔出すつもりで着ている客も多いので
じっと、カヌーへの一体感を暗闇の中で共有するところまで
観客が待てないと言う事態、人が少なければ楽しめたかもしれない。
それぞれ、銀座メゾンエルメス8Fにて5/17まで。
と思ったら会場で久々に出会った元ボスが自分のところで紹介していました。
全然違うと言えば違うが『40声のモテット』のCD音源で聴ける物は
LINN盤くらいだろうな、LINNの機器で聴いたら素晴らしいんだろうな。

Spem in alium
Philip Cave/Magnificat

帰りに通りを出たところのい空間居酒屋『山猿』で日本酒、
そのまたあとに歌舞伎座脇のワインバーで赤を一杯。
開場でのシャンパンとあわせ呑み過ぎ。

*1:中世のころにステンドグラスからの光が差してる教会でこんな音の中に放り込まれたら改宗すると思うわ